【名詩】風景 純銀もざいく 山村暮鳥

文学

菜の花のきれいな季節です

先日は

冬来りなば 春遠からじ

ということわざの紹介をしましたが、

山村暮鳥さんの残された名詩『風景 純銀もざいく』も思いだします

『風景 純銀もざいく』 山村 暮鳥 

いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 かすかなるむぎぶえ
 いちめんのなのはな

 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 ひばりのおしやべり
 いちめんのなのはな

 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 やめるはひるのつき
 いちめんのなのはな

初めて見たときはなんだか面食らうような文面でしたが

よく見るとやはり味わいのある詩です

ひたすら繰り返される“いちめんのなのはな”という言葉

ただただ広がる菜の花の風景が、頭のなかにも広がります

広がった黄色い景色の中にふいに聞こえる“かすかなるむぎぶえ”、そして“ひばりのおしゃべり”

鮮やかな景色の中に柔らかな音色を印象付けてくれます

そして最後にでてくる“やめるはひるのつき”

ここで今までと違う違和感が生まれます

麦笛、そしてヒバリは音を印象づけてくれたのに対して

昼に空に浮かぶ月

ぼんやりと白く浮かぶさまを「病める」と表しているのでしょうが

明るかった景色の中に少しだけ影を落としながら

“いちめんのなのはな”という言葉で締められています

世界は綺麗なように見えても、そこにいる自分には少し影があるというような

なんとも儚いような印象を受けます

ですが美しさを感じるこの詩がとても好きです

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