久々の投稿ですが、おすすめの書籍を紹介したいと思います
小泉吉宏氏の著書『ブッタとシッタカブッタ』
今更紹介するのも気が引ける名作であり、この新装版でも初版は2003年とだいぶ昔の書籍ではありますが、僕は以前読んでとても心に残っていた本です
精神科医療の現場で働いている僕は、治療の一環で「物事の考え方」に注目することも多いのですが、そこでふとこの書籍のことを思い出し、再度紹介したいと思い立ちました
日々の生活の中で些細なことで悩んだり苦しんだり、その原因の多くが人間関係にあります
「どうしてこんなに苦しい思いをするんだろう」「なんで私の気持ちを分かってもらえないんだろう」
そんな風に思ってしまう方にはぜひ読んでもらいたい一冊です
ブッタとシッタカブッタ
本の構成は4コマ漫画がメインで、時折イラストやテキストが織り交ぜられており、普段本を読まない方でもとても読みやすいと思います
登場人(?)物は、どこにでもいる普通のブタの「シッタカブッタ」と、そんなシッタカブッタを見守る「ブッタ」の二人です。「仏陀(ブッダ)」ではありません(笑
この本の冒頭でも述べられていますが、これは宗教の本ではありません
このタイトルのシリーズ自体は3巻まで出ていますが、この巻は「恋」をテーマの一つに扱っていることもあり、だれでもイメージしやすい内容になっているのではないかと思います
自分を悩ませるものの正体
「会っているとシアワセ」「会っていないとふシアワセ」
好きな人と一緒にいると、そんな風に感じるシッタカブッタ君
しかし、彼女の言動は時に自分の思い通りにいかないことがあります
待ち合わせの時間に来ないことをとても心配に思ったり、彼女に気に入られようと話の内容をあれこれ考えたり、
シッタカブッタ君は「どうして僕はこんなに悩む恋をするのだろう」と悩みます
いつしか・・・
「会っているとふシアワセ」「会っていないとシアワセ」
「どうしてこんなに疲れるんだろう」
「こんなに愛しているのに」「こんなに好きなのに」
そんなシッタカブッタ君に一匹のアリが近づいて声を掛けます
「だれを?」
イライラが募るシッタカブッタ君
「あの子を傷つけてしまった」「僕はなんて悪いやつだ」
そんなシッタカブッタ君に一匹のアリが近づいて声を掛けます
「そんなに自分をほめるなよ」
「こんなに好きなのに」「僕は悪いやつだ」
これらの言葉は誰のためのものでしょうか
「こんなに好きなのに」「僕は悪いやつだ」
それに続く言葉は誰のためのものでしょうか
好きな気持ちはだれのため
溺れる蜂さんを助けてあげたシッタカブッタ君は、飛び去る蜂に刺されてしまいます
「助けてあげたのに刺すことないだろ!」
しかし気づきます 「・・・助けてあげたのに、か」
「こんなに愛してるのに!」って言葉は
「愛してる」ではなく「愛してくれ!」という意味だと気づきます
「考えてみたらこんなに好きなのに、って言っても目の前のパフェが倍になるわけでもないもんな」
と納得するシッタカブッタ君
「こんなに好きなのに」「僕は悪いやつだ」そう思うのは
「こんなに好き(だから好きでいてほしい)」「僕は悪いやつ(だから許してほしい)」と思う自分のエゴだということに気づきます
いくら相手のことが好きでも、相手が自分をどう思うかは別の話
いくら自分のことを責めても、相手が自分をどう思うかは別の話
「そうか、この気持ちはエゴなんだ!」と気づくと、少し前進した気持ちになりますが、
「これがエゴだと知った自分」すらもエゴだと思えてしまいます
でもそうやって自分のことを知っていくと
自分を悩ませていたのは、この自分だということに気づきます
時にはそんな自分に失望するかもしれません
自分の思い描いていた自分の姿とはかけ離れ、自分の愚かさ、自分の小ささを感じるかもしれません
でも愚かだろうが小さかろうが、そこで見つけた自分の姿はかけがえのない自分の姿です
誤魔化しも偽りもない確かな自分の姿
そんなありのままの自分を愛してあげられるのは自分だけなのだから、まずは自分を愛してあげよう
自信をつけるのに必要なのは、お金や地位なんかじゃなく、小さくても確かな自分を見つけてあげること
自信は初めから自分の中にあったんだ
ものの見方
空に浮かんでいる月を見て、ブッタ様はシッタカブッタ君に尋ねます
「何が見える?」 「月が見えます」
同じようにシッタカブッタ君はブッタ様に尋ねます
「ブッタ様は?」
「”月”と”空”が見える」
普段見ている当たり前のことも、もしかしたら見えていない部分があるのかもしれない
本当は見えているのに、見ようとしていないものがあるのかもしれない
三日月を見ても、月が実際に欠けているとは思わない
それは月が球体であると知っているから
「あの人はいつも機嫌が悪くて怖いな」
そんな風に思うと、その人が笑顔でいる場面を見ようとしないのかもしれない
心でものを見ている
木の板と木の棒が4本置いてあっても、それが机だとは思わないけど
でもそれをつないで組み合わせたとたん机になる
物は変わっていないのに、それがある形を成しているかいないかで「机」は現れたり消えたり
「机」ってここにあるんじゃなくて頭の中にあるような気がするなぁ…
目で見た情報はそのまま捉えているのではなく、「机」を知っている心で見ている
好きな人を見るとき、好きだという心を通して見ている
苦手な人を見るとき、苦手だという心を通して見ている
にも関わらず、僕たちはその人そのものを見ていると思っている
心を通して浮かび上がる、その人に近い影を見ているのにそれに気づいていない
最後に
この本は、自分を悩ませるものはなんだろうというテーマから始まります
外から影響を受けたそのもので自分の心は悩まされているように思いますが、現実はそうではありません
人が何かを見たり聞いたり感じたりするとき、それは自分の心を通しています
そして心というのは厄介で、「エゴ」というものが事実を曇らせてしまいます
そしてそのことにも気づかなかったり…
大切なのはそのことに気づくこと、そして受け入れること
本の終盤でこんな言葉があります
不幸な気持ちを味わいたくなければ 幸福を消せばいい 幸福を味わいたければ 不幸を消さなければいい 幸福と不幸は別々のものじゃない その事実を知ること それが覚悟。
不安や悩みがあることは当然のこと、だって人は心を通してしかもの事を見られないから
でもそれを変えようとかじゃない、それが自分なんだと知ること
雨が降ったら やむのを待てばいい 悩んだら 悩みがやむのを待てばいい
僕がこの本で一番のお気に入りの言葉です
悩んだときに気軽な気持ちで読んでみてほしい一冊ですし、ゆっくりと時間をかけて読んでみても欲しい一冊です
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